2012年より全国的に風疹の流行が続いています。
眼科のブログで「なぜに風疹?」と思われる方もおいでかと思いますが、
妊娠初期の女性が風疹に感染すると、胎児に影響が現れることがあります。
その症状は「先天性風疹症候群」と呼ばれ、白内障の症状も含まれます。
妊娠10週までに妊婦が風疹ウィルスに感染すると、
90%の胎児に影響を及ぼすと言われており、
症状としては、難聴・心疾患・白内障・発達の遅れなどがあります。
乳幼児期の視覚が成長する時期に、白内障で良好な視力の発達が妨げられると、
弱視になったり、両眼視機能(同時視・融像・立体視)が得られないまま
大人になってしまいます。
人間の眼の機能の成長は、8歳頃までと言われていますので、
その時期に良い視力や両眼視能力が獲得できないと一生そのままになってしまいます。
白内障が瞳の中心からずれていたり、濁りが強くない場合は経過観察することもありますが、
白内障の濁りが強い場合はお子さんが小さなうちに白内障手術を行うことになります。
白内障は眼の中にある水晶体という強いプラスのレンズ部分に濁りが生じるものなので、
白内障手術を受け水晶体をとってしまうと、
代わりのレンズ=人工水晶体(眼内レンズ)を挿入するか、
長期装用型のコンタクトレンズによる矯正が必要になります。
白内障手術後は調節力がなくなりますので、眼内レンズにせよコンタクトレンズにせよ
その上から眼鏡も必要になります。
しかし、人間の身体は成長と共に大きくなりますが、眼球も同じで大きくなります。
眼球の大きさが変わってくると、見やすいレンズの度数も変わってきます。
視覚の成長のために、成長期には見やすい度数の見直しが必要になります。
また、コンタクトレンズでは、角膜にキズができたり失くしてしまったり、
眼内レンズ挿入術時に合併症を起こすこともありますので、
すんなりと視覚の成長が期待できるかというと厳しい面もあります。
また、日本での風疹の流行の特徴いうと、
昨年の風疹報告者453人のうち350人が男性で、
うち20代と30代が6割を占めていることが挙げられます。
つまり、風疹の予防接種が女子中学生に限定(94年以前)だったり、
接種率が低かったりした世代(特に79~87年生まれ)と重なります。
抗体を持たない若いお父さん世代が風疹に感染し、
家庭内で広まってしまうことがみられるようです。
風疹は予防接種で十分な免疫がつくと、かかることはありません。
現在は風疹の予防接種は、1歳と小学校入学前の2回です。
また、2008年度から5年間は、
中学1年と高校3年に相当する年齢で2回目の接種の措置がとられています。
大人の方の予防接種は、自費になってしまうのですが
だいたい5千円~8千円程度で受けられるようです。
1万円近い急な出費は大変かと思いますが、
これで小さなお子さんが手術でがんばらなくてもよいと思えば
大人はがんばれるかなと考えます。
また今回予防接種について調べていて面白い記述をみつけました。
「予防接種の徹底したアメリカ等では日本人の入国に際して風疹の予防接種を行う指導がなさ
れたりする。なお、アメリカの医学書では日本や日本人は風疹の感染源として説明されている
ほどである。」
知らなかった~。
予防接種がんばって受けておきましょう。
追記2013年3月12日
感染は感染者の鼻汁に含まれる風疹ウィルスの飛沫感染または直接接触感染です。
潜伏期間は2~3週ありますので、知らない間にウィルスを拡散してしまいます。
効果的な治療はなく、ワクチンによる予防が最も重要になります。
特異的な治療方法はなく、対処療法を行います。