日常生活では、眼球や顔を動かすことにより、より広い範囲の情報を得て行動していますが、
眼科での「視野」というのは、
眼球や顔を動かさず視線を固定した状態での見える範囲をいいます。
そのため、視野検査(見える範囲の検査)では
固視点の一点をじっと見ておくようにしてもらうことが重要です。
中心の一点を見ることを固視といいますが、
固視が悪いと信頼性の低い視野検査となってしまいます。
視野の広さは何度という度で表しますが、
視野の中心から15°耳側にマリオット盲点という見えない部分があります。
この部分は視神経乳頭にあたり、対応する網膜が存在しないため、
正常な人でも盲点となります。
典型的な緑内障の初期の場合、
マリオット盲点より鼻側、水平線上に暗点(見えない部分)が出てきますが、
日常生活では気づきません。
どうして気づかないかというと、眼は二つあるので、片方の眼で見えない部分があっても、
もう片方の眼で補ってくれるので、気づきにくいのです。
さらに、脳の機能上欠けている部分を補って、見えていると感じてしまい、
見えないと認識できないのです。
欠けてしまっている視野を良くすることはできないので、
これ以上悪くしないというのが緑内障の治療になります。
視野検査を行い、緑内障が進行・悪化していないかを判断することが、非常に重要となります。
眼科でいう「視野」とは、範囲(広がり)だけではなく、視野の部位での感度も含めたものです。
正常な人では、視野の部位により視覚の感度が違うため、
視野の中心で見る方が周辺よりもよく見えます。
視野は中心部で感度が高く、周辺部になると感度が低くなる広がりを持っています。
一般に固視点から30°以内を中心視野といい、その外側を周辺視野といいます。
正常な視野の範囲(片眼)は、上方60° 下方70° 鼻側60° 耳側100° 程度とされています。
当院で行っている視野検査は、ゴールドマン視野検査とハンフリーです。
特徴を簡単にまとめてみました。
《ゴールドマン視野計》
大まかにいうと、視野の広がりを調べる検査です。
どのくらいの視野が欠損しているのか(どれくらい残存しているのか)
視野全体の広さがわかります。
周辺視野の異常の検出に優れていますが、検者の影響を受けやすく、
中心部の小さな暗点は、見逃す危険もあります。
患者さんの疲労や集中力に応じて、臨機応変に検査が行えます。
緑内障においては、中心部の障害が強く、ある程度進行した症例では、
全体的な視野評価ができます。
《ハンフリー視野検査》
中心部の視野の広がりと感度(欠損の深さ)を細かく調べることができます。
広がりはあまり変化がなくても、感度が低下していると緑内障が進行していることになります。
コンピューターによる自動化された検査のため検者の影響が少なく、信頼性は高いです。
検査時間は長く、周辺まで含む広い範囲の視野検査には向きません。
視野検査は、時間もかかり、眼も疲れ、大変な検査だと思いますが、
客観的に病気の進行、治療の効果が評価できるとても大切な検査ですので、
定期的に受けて積極的な治療を受けて頂けると安心です。
Aku