食欲の秋です。スーパーや八百屋には色とりどりの果物が並び食欲をそそりますね。
今回は果物に多く含まれる糖から話題を貰い、糖尿病性網膜症についてお話していこうと思います。

まず糖尿病とはどんな病気でしょうか。
糖、というからには糖質、私たちが摂取する食事に関連があります。
私たちが食事で糖質を摂取するとそれは分解されブドウ糖になります。ブドウ糖は血液中に取り込まれ全身に送られます。送られたブドウ糖は膵臓から分泌されるインスリンの働きで細胞内に吸収され、私たちが活動するためのエネルギーになります。エネルギーとして使われなかったブドウ糖は、同じくインスリンの働きで脂肪細胞の中に蓄積されます。
ところがなんらかの原因でインスリンの分泌量が少なかったり、働きがよくなかったりするとブドウ糖が細胞内にうまく吸収されず、血液中にあふれ出てしまいます。こうした状態が続くと、血液中のブドウ糖の量(血糖値)が慢性的に増え、身体の様々な部分に悪影響が出てきます。これが糖尿病という病気です。
血糖が高い状態(高血糖)が続くと糖が血管壁に付着し、血管壁のタンパク質を糖化しタンパク質の機能を低下させたり細胞を老化させます。糖化タンパク質により老化した血管壁は傷つきやすく、それを修復するために血小板が集まり、血管内腔を狭くして血液が流れにくい状態になったり、血管の詰まりが生じます。また、このような変化は細い血管で生じます。

眼の網膜という部分は、瞳から入った光の色や形を感知するために大切な器官です。網膜には細かい血管が全体に張り巡らされており、血液が流れにくくなった時や詰まった時にダメージを受けやすい場所になります。
初期の段階(単純網膜症)では症状がないことが多いです。しかし眼底検査をすると毛細血管の一部が瘤の様に膨れる毛細血管瘤や、血管の壁から血液が染み出した点状・斑状出血などが見られるようになります。この段階では血糖コントロールをメインに治療をし、網膜循環改善薬などを投与することもあります。
単純網膜症が進行していくとやがて網膜の一部に血液が流れない状況が起こってきます(増殖前網膜症)。この時点でも症状が無い場合もありますが、黄斑という、ものを見るための大切な部分に血管から染み出た水分が溜まるとガクンと視力が落ちます。治療は血糖コントロールと共に抗VEGF薬注射やレーザー治療等を検討していく必要があります。
そこからさらに進行すると、血液が行かなくなってしまった網膜に酸素を送り込もうと新生血管ができてきます。この血管は大変もろく出血しやすいため、破れて出血が広がると視力に大きな影響を及ぼします。また新生血管から染み出た成分が刺激となって薄い膜状の増殖膜が形成され、それが網膜を牽引して黒い墨のようなものが流れる網膜剥離を起こすこともあります。こうなってくると、視力低下や飛蚊症などはっきりした症状が出てくることも多く、視力回復、増悪防止のためレーザー治療や硝子体手術が必要になってきます。それでもここまで網膜の状態が悪化してきてしまった場合には、治療を受けても視力回復が望めないこともあります。

糖尿病性網膜症の怖いところは、かなり症状が進行しても自覚症状がない場合があることです。生活する上で大切な視機能を保持していけるよう、糖尿病と診断された方は症状がない場合でも定期的に眼科を受診して眼の状態を確認してもらいましょう。