新年あけましておめでとうございます。
今年の干支は60年に一度の丁酉(ひのととり)です。酉は一般的な鳥ではなくニワトリのことを指すそうですが、干支にちなんで鳥類の眼についてのお話をしたいと思います。

動物の網膜には光や色を感じる視細胞があります。
視細胞には暗所で機能して光に対する感度が高い杆体と、明所で機能して色彩の識別をする錐体があります。錐体は主に網膜の中央にある黄斑部(特に中心窩)に集まっています。
ヒトでは赤、緑、青、それぞれの波長の光に反応する3種類の錐体がありますが、鳥類ではこれら3種類の錐体に加えて、紫外線(もしくは紫)を感じることができる4番目の錐体を持っています。従って、鳥はヒトには見えない花の模様が見えるなど、ヒトよりも色彩の豊かな世界を見ていることになります。

更に、鳥類は非常に鋭敏な視覚を持っています。特にタカやワシなどの猛禽類は、1km以上の上空から地上のネズミを識別することが可能です。鳥の視力が良いのには、以下のような理由が挙げられます。

まず第一は、ヒトなどと比較して体の割に目が大きく、レンズの焦点が長いということです。
カメラの望遠レンズと同様、焦点距離が長いほど網膜に大きな像を映し出すことが出来るため、大きな目だと良く見えるのです。ただし、目が大きいことの欠点もあります。ニワトリやハトなどの鳥たちは、地上を歩くときせわしなく首を動かしますが、その理由は鳥類では目が大きくなり過ぎてほとんど動かないため、代わりに首を動かして物を見ているためとされています。

次に、鳥類では物を見る視野の中心部に当たる中心窩の機能が、他の動物に比べて高いことが挙げられます。
光を感知する中心窩の機能は錐体の数に比例しますが、鳥の中心窩の錐体密度は人の数倍あり解像度が向上しています。
更に、猛禽類やツバメ、モズ等の飛びながら餌を探す鳥には1つの眼に中心窩が2つあって、周囲に注意を払いながら目の前の小さい虫も同時に見える機能を持っています。
また、ヒトのように網膜に多くの血管があるとその部分は視細胞に十分光が届かず見え難くなります。しかし、鳥類では櫛状突起(ペクテン)という特殊な構造をした部分に血管が集約されていて、比較的血管の乏しい網膜に酸素や栄養補給をして高い視力を確保しています。

夜になると目が見えづらくなる夜盲症のある人を「鳥目」と言いますが、杆体の発達している夜行性のフクロウなどはもちろん、鳥類ではほとんどの種が夜目はききます(渡り鳥の場合には、夜間に飛んで移動することも多いです)。
それではなぜ「鳥目」というようになったのかというと、これは本来ニワトリのことを指したものです。ニワトリは元々視力がとても弱い生物なので、暗闇ではほとんど目が見えません(多くの鳥の視力は2.0~4.0、ハヤブサは8.0ですが、ニワトリの視力は0.07位とされています)。
そこで、以前はニワトリのことを指して「鳥目」と言っていたのですが、いつの間にか鳥類全体を指すようになってしまったという訳です。
尚、ニワトリの視力が悪い理由は、他の鳥と同様に黄斑部はありますが、中心窩を持っていないためです。

歴史的にみて「丁酉」の年は変革がある年とも言われています。当院でも今までの診療経験を踏まえ、今年は新たなステップアップを目指していきたいと思います。


 ▲ヒトの眼底