今日は、白内障の手術に使用する眼内レンズ【多焦点眼内レンズ】について、
お話したいと思います。
①眼内レンズとは・・・
白内障になると 眼の中にある水晶体(カメラでいう凸レンズの役割を果たす)が、
白く濁ってしまいます。
眼の中にあるレンズが白く濁ってしまうと、外の光が眼の中に十分に入らず、
見えにくくなり視力低下を起こしてしまいます。
見やすくするために、白く濁った水晶体を超音波で削って吸い取り、
代わりに人工のレンズを入れます。このレンズを眼内レンズといいます。
今までは「単焦点眼内レンズ」(ピントの合う距離が1ヵ所)だけだったのが、
現在は多焦点眼内レンズを用いることができるようになりました。
②多焦点眼内レンズとは・・・
新たに使用できるようになった多焦点眼内レンズとは、
ピントの合う距離が1ヵ所だけでなく、
遠方・近方とも眼鏡使用を軽減できるレンズです。
③特徴
多焦点眼内レンズは複数の距離に焦点を合わす事ができるとはいうものの、
若い頃のように見たい所に焦点を自由に合わせてくれる水晶体とは
違うので、位置により見えにくい場合には、眼鏡が必要となることもあります。
日常生活ではほぼ眼鏡を使用しないが、より細かい字を見るとき、長時間の読書などでは
眼鏡を必要とします。
また、多焦点眼内レンズでの見え方に脳が慣れるまでには、年齢や個人差はありますが、
一般的には数ヶ月かかると言われています。
暗い所では、単焦点眼内レンズに比べると、くっきり感がやや落ち、
ハロー、グレアが気になることもありますので、
夜間運転が多い方には向いていないかもしれませんが、
眼鏡をかける頻度、本数を減らしたい方には好ましいと言われています。
*ハロー、グレアとは、夜間のヘッドライトなど光を見ると光が散って眩しさを感じたり、
光の輪が見えたりする不快な症状のことです。
④手術適応
・乱視が少ない(-1D以下が望ましい)
乱視が強いと、手術後に二重に見えるなど、見えにくさにつながってしまいます。
・瞳孔径が3mm以上
瞳孔が3mm未満だと、近くがやや見えにくいと言われています。
多焦点眼内レンズには2種類あります。
1つは回析型と言われ、特徴は遠距離・近距離の2つに焦点が合うレンズです。
瞳孔の大きさに左右されないため、瞳孔が3mm未満でも
遠距離・近距離が良く見えます。
また屈折型レンズは、レンズの中心に遠くのゾーン、その周りに近くのゾーン、
その周りに遠くのゾーンというように、5つのゾーンにわかれています。
特徴は、光を遠距離・近距離に振り分けないので、遠距離がくっきり見えること、
中間距離が見やすいことです。近距離の見え方は瞳孔の大きさに左右されるので、
瞳孔が3mm未満だと近くのゾーンに瞳孔が隠れてしまうために、
やや見えにくいと言われています。
・他に合併症のない目
網膜疾患や緑内障などがないことです。
( 多焦点眼内レンズの欠点である「ハロー」 「グレア」 が
より影響する可能性があるためです。)
・スポーツをする人
特にマリンスポーツをしていてコンタクトレンズがつけられない人には良いでしょう。
・80歳未満の人
80歳以上になると、瞳孔径が小さくなってしまいます。
そのため、屈折型レンズを入れてしまうと、近くの見え方が見えにくくなってしまいます。
⑤手術費用
多焦点眼内レンズを使った手術は、健康保険の適応ではありません。
自費診療となってしまいますので、通常の白内障手術に比べると、
高額負担になってしまいます。片眼35万円かかります。
白内障手術を御希望の時には、
お仕事や趣味などライフスタイルをお話しいただき、相談して、
患者様の眼の状態や生活に最適な眼内レンズを選ぶことも可能になっています。