当院では毎朝ミーティングを行っています。
その際、今日の予定の確認、前日の患者様の情報の共有を行ったり、
毎日担当を変え、ミニ勉強会を行っています。
ミーティングでは院長から最近の眼科トピックスの話があったり、
各部門のスタッフが専門分野から話をしたりしています。
眼疾患に関しては、何回かのシリーズで勉強会をしています。
今回から数回に渡り、勉強会から緑内障のお話をさせて頂こうと思います。
現在、日本人成人の中途失明の原因疾患の第1位が緑内障です。
しかし、緑内障は早期発見をし、しっかりと点眼治療をすれば、
多くの方が失明の危険から免れることができる疾患でもあります。
ただ緑内障の病態を知らず放置してしまうことが
中途失明第1位に躍り出た原因と思われます。
また知らないといたずらに恐怖心だけを煽ってしまいますので、
皆さんも一緒に病気に対する理解を深めて頂けたら嬉しく思います。
今回は『眼圧』をテーマにお話を進めたいと思います。
眼の中には房水という水があり、眼球が球状を保ち、
ちゃんと見えるよう中から圧力がかかっています。
この圧力のことを「眼圧」と言います。
房水は毛様体でつくられ虹彩の後ろ側を通り水晶体の前を循環し虹彩の前に出て
虹彩と角膜の間を循環します。
房水は透明ですが、血液と同じ成分です。
何らかの原因で房水が流れ出ていく量が少なくなると、眼圧が上がり、
視神経を圧迫し緑内障を引き起こす要因となります。
正常眼圧は、国際的には10~21mmHgと言われていますが、
日本人だけで調べた正常眼圧値は、10~20mmHgと報告されていて、若干差があります。
また10~20mmHgの間なら絶対に大丈夫だということではなく、
正常眼圧値内でも緑内障の変化が起こる「正常眼圧緑内障」があります。
ですから、眼圧値はいくつなら大丈夫という判断はありません。
その方その方により心配なさそうな眼圧値は異なります。
また眼圧は常に一定の値ではなく、変動しています。
季節によっても変動しますが、寒い季節には高くなり、暖かい季節には低くなります。
また1回に500ml以上の水分を摂ったり、カフェインの摂取でも高くなります。
緑内障のない人でも眼圧は一日を通して3~6mmHg程度変動し、
変動幅が10mmHgを超えると緑内障の危険が高くなります。
緑内障の患者さんでは、緑内障のない人より変動幅が大きくなります。
緑内障のない人、緑内障患者さんともに最高眼圧値は午前中に示すことが多く、
最低眼圧は夕方から夜間に多いとされています。
しかし、最高眼圧を夜間に示す人も少なくありません。
外来で検査させて頂いていると、眼圧はしっかり下げることができているのに、
視野障害が進行したり、視神経の状態が悪くなったりしている人は、
1日の変動見ていく必要があります。
昼間は眼圧が下がっていても、夜間にピークがある場合もあります。
夜間の眼圧は外来では測定できないので、
入院施設のある病院で測定してもらう必要があります。
緑内障では、眼圧を下げ視神経を圧迫しないことが大切です。
では眼圧はどのくらい下げればいいのかというと、
目安としては点眼治療開始前の眼圧値から、20~30%下降させることが目標になります。
岐阜大学の調査によると、
点眼前の眼圧から20%の眼圧下降ができたグループは10年経っても
92.7%の方が視野を維持でき、
20%の眼圧下降ができなかったグループは全員が進行していたという結果になりました。
また、外国からの報告ですが、正常眼圧緑内障患者さんを調べた結果、
眼圧が低ければ低いほど、視野障害リスクが下がることがわかりました。
1mmHg下げるごとに視野障害進行リスクが10%下がることがわかっています。
眼圧を下げるためには、まずは点眼薬をしっかり医師の指示通り点眼することが大切です。
痛くもかゆくもなく、自覚症状がないまま緑内障は進行することもあるので、
眼圧が下がっているか定期的に確認することが大切です。
aku