先日(令和4年2月2日放送)NHK「ためしてガッテン」の最終回で、「しつこい目のぼやけ 気づいて!本当の原因解明SP」というタイトルでsagging eye syndrome(以下SES)が取り上げられました。
当院でも昨年5月にブログにてSESを取り上げ情報発信してまいりました。おかげさまで放送直後、全国からお問い合わせのお電話や、検査してほしいと遠方より直接来院される方がいらっしゃいました。

ここで今一度SESについて説明したいと思います。

SESとは加齢に伴う筋間結合組織である外直筋―上直筋(以下LR-SR)バンドの菲薄化によって、外直筋プーリー(眼窩プーリーの一部)が下垂して生じる微小内斜視または上下回旋斜視、あるいは両者の合併をいいます。
眼窩プーリーとは眼窩壁から懸垂する格好でリング状に赤道部を取り囲む結合組織で、眼球赤道部で最も発達しており、コラーゲン・エラスチンなどから構成されます。外直筋プーリーは外眼筋の位置ずれを防ぎ、眼球をスムーズに動かす役割を担っていますが加齢によって菲薄化し、進行すると眼球運動障害や眼位異常が生じてSESを発症します。特に外直筋プーリーは加齢による影響を受けやすく、菲薄化し重力の影響で下方に偏位します。そして外直筋プーリーの偏位が影響して外直筋プーリーと上直筋プーリーを結ぶ帯状組織(LR-SRバンド)が引き伸ばされ、さらに進行すると断裂を引き起こします。その結果、遠くを見たときに物が二重にみえる開散不全型内斜視や外方回旋を伴う上下斜視を発症します。

SESのような複視を生じる疾患は、他にも麻痺性斜視・パーキンソン病・重症筋無力症などがありますので鑑別が必要です。

SESの治療は、主にプリズムという複視を軽減する特殊な眼鏡を装用します。プリズムでの補正が困難な場合は手術適応となります。
なお、治療に際してプリズム眼鏡や斜視手術はともに、治療後に再びSESが進行して症状が再発する可能性がありますので注意が必要です。

当院では、斜視の検査ならびにプリズム処方を予約で行っています。お気軽にお問い合わせください。

参考引用文献

あたらしい眼科Vol.33 No.12 2016 P1721-1724 後閑利明 Sagging Eye Syndrome
日本視能訓練士協会誌第49巻P13-20、2020 岡真由美他Sagging Eye Syndromeと眼球運動麻痺との相違点を中心に
医学書院 視能学エキスパート 視能訓練学